ハートガイ 「真心貝」 

どことなく 心遣いを 感じられる和名です。甲殻類アナジャコの 腹面に共生する 殻の長さ1cm程度の 小型の 二枚貝です。

アナジャコに 付着した状態で見ると 殻の形が 心臓の形に似ていることから 「心臓型」(心臓=ハート・真心) と見たてて

この名前がつけられたようです。ハートガイという呼称は 漢字表記に比べると 近代的かつ 直接的表現の 仕方のようです。


  平貝 「タイラギガイ」

二等辺三角形状の 30cm以上になる 平たい大型の食用貝。殻色は黒色で 海底の泥部に 三角の鋭角の方を 下にして

立って 棲息しているので 漁師さんには 「タチガイ」 と呼ばれているようです。なるほど、殻の形より 特徴を 感じられますね。

また地方名には 「ターラゲー」 「タイラゲェ」 「テェラゲェ」 「タイラギャー」 と 複数あり、訛っていることが 多いらしいです。

貝柱は 生成色の 楕円系で 直径4〜5cm程度、市場では 「タイラガイ」 という名で 販売されているのを 良く見かけます。


  バカガイ 「馬鹿貝」 

アサリ同様、潮干狩りで おなじみの ポピュラーな貝。別名 「青柳」 ともいいます。剥き身を 甘辛く煮て 丼にする 「青柳丼」

に使用されるのが この貝です。青柳という名の由来は、昔は 現在の 千葉県市原市の事を " 上総青柳村 " と 呼んでおり

青柳村は、馬鹿貝の産地だったことから 「青柳」 と 名付けられたようです。国語辞典では 岩川説を 採用しており


死んで赤い足を殻から出した姿が馬鹿が舌を出した姿 ” に 似ていることから、この名前がついたようです。


が、別の節もあり


容易に大量に収穫出来るものの不味でマジメに取り扱う価値がないから「馬鹿」だ ” という説も 存在します。

青柳の 生姜醤油煮 や 青柳丼って、結構 美味しいんだけどなぁ・・ なんにしても 失敬な名前です。


  ハマグリ 「蛤 ・ 文蛤 ・ 浜栗」

食用貝としては アサリや 帆立と並ぶ 有名さで、貝殻に 興味のあるないに限らず 食生活において 身近な貝のひとつです。

が、残念な事に 近年生息地が 次々と失われ、店頭販売される 蛤の大半は、シナハマグリ が 断然 多いという現状です。


「その形 栗に似て 海浜に棲むので 浜栗という」 という言われが 和名の始まりのようです。


また別節では 「 "クリ" とは 小石を指し 砂浜の中にある 小石のようなので ハマグリ 」 とも 言われているようです。

色彩 ・ 文様は 様々ですが、前者の説に 従うのであれば 和名の起こりは 褐色の個体を見て 命名されたと 思われます。

また 「文蛤」 と いう名前は 「あやはまぐり」 と読み、文様のある 個体を指して 使われるようです。


  ヒオウギ 「桧扇」 

食用として 養殖も行われており、殻の色は 黄 ・ 橙 ・ 朱 ・ 赤 ・ 紫 と 殻を 塗装したかのように 美しい二枚貝です。

桧扇とは 細長い桧の薄板を 綴じ連ねて作った 扇子の事を指します。貝の放射肋を 扇子を開いた姿に 擬えたのでしょう。

場合によっては 「桧扇」 でなく 「緋扇」 と 書かれているケースも 見うけられますが、この貝の代表色を 緋色と見た

意味合いから つけられた表現とも取れます。よって 大抵は 当て字もしくは 誤記といった判断を されることが多いようです。


  コウホネガイ 「河骨貝」

骨なんて字が出てくると、ちょっと 美しいイメージからは 離れてしまうように思いますが 筋目が美しい 白い貝です。

コウホネガイの 命名のルーツを 辿ってみると、水草の一種である コウホネの葉に 由来していそうです。水草の コウホネ は

スイレン科 ・ 多年草の植物ですが、これが川面に生えると 根や茎が 白骨のように見える事から コウホネと命名されたよう。

コウホネの葉は 先端が 鋭く尖っており 基部も 矢じり型に 左右に分かれ 尖っています。コウホネガイの特徴である 殻頂が

膨れ クルリと 前方に巻き込み、殻頂から 後腹縁に向かって 鋭い稜角のある 特徴的な部分が、コウホネの葉に 喩えられて

この名前がついたと思われます。 読み方としては 濁らずに 「コウホネ」 と 呼ぶほうが 正解のようです。

類似種の 「セキトリコウホネ」 であれば コレクションにありますので 興味のある方は ご覧下さい。


  ネコジタザラ 「猫舌皿」 

名の如し、猫の舌のように ザラリとした質感を持つ、淡紅色の 放射彩のある 白い二枚貝です。殻の表面全体には 細かい

「鱗状突起」 が 密生して、それが この ザラリとした質感の 秘密のようです。

猫舌という言葉は 通常、猫が 熱い食べ物を嫌って 食べない様を、熱い物が 苦手な人に 例えて使われますが、この貝に

ついては 猫のザラリとした 舌の質感を、この貝の 鱗状突起の質感に 喩えて 名づけられたものと 思われます。

どちらも 猫の舌の説明としては 間違ってないですね(笑) また ラテン語の 和訳にも (lingua=舌,felis=舌) とあり

この貝の 学名である Scutarcopagia linguafelis というところとも 一致しており、この名称になったようです。


  テンシノツバサ 「天使の翼」 

ニオガイ科に属する貝で 白く長細い、ふっくらとした形の 二枚貝。放射肋は 30本前後あるようです。

両殻を 広げて置いた形を 天使の翼に見立て、この和名が付いたようで、そのとおりに置いてみると なるほど、ふっくらとした

翼のように見え 納得してしまいます。英名も 同意味で ( Angel Wing ) と されており 知名度は 結構 高い貝のようです。

これと類似したもので 「ペガサスの翼」 という、天使の翼よりは やや細めの貝があります。命名の由来も 天使の翼 同様

両殻を 広げて置いた図が ペガサスの背についた 美しい翼のように 見えることから、この名がついたようです。

天使の翼 ・ ペガサスの翼、共に 名も形も 美しい貝で 命名した人は、さぞ ロマンチックな方だったのだろうと 思われます。


  ニオガイ 「鳰貝」 

潮間帯の 水成岩などに 穿孔する 白色の二枚貝です。形状は 1つ上の 天使の翼 ・ ペガサスの翼と 類似しています。

「鳰(ニオ)」 とは 湖や沼、河川に棲む鳥 「カイツブリ」 の 古名の事です。この貝の前方の 尖っている部分を カイツブリの

嘴に 喩え、水面を遊弋する カイツブリを連想して、この名前がつけられたのではないかと 思われます。


  チリボタン 「散り牡丹」 

和的な 可愛い名前です。 貝自体は 不規則な形で、二枚貝に属します。 ビーチコミングしていると 良く 見かける貝です。

この貝は 殻の右側 ( どの ポジションを基準に 右としているのかは謎 ) で 岩に 付着固定するため 砂浜に落ちてる場合は

左部分の殻とされる方が 多いようです。 大きさは 数mm 〜 2cm弱 で 丸っこいものが多いように思います。 乱雑に扱えば

「カリン」 と 音を立てて 割れてしまいそうな、薄く 赤い縮緬のような質感が 特徴です。 由来としては 波打ち際に 落ちている

この貝の 赤い殻のことを、散り落ちた 牡丹の花弁に 喩えた和名だということで 実に 納得のネーミングです。